1.2. 情報源の種類


情報源マッピング:記事の主要な登場人物とその行動を記録した文書を特定します。これは探査報道の次のステップです。
政府、病院スタッフ、企業、マフィア、政治家が何をしてきたかを示す多くの公的文書があります。 さまざまな情報提供者も、設定した仮説を確認するか、または間違いを明らかにするのに役立ちます。
同じ情報を確認するために少なくとも2つの別々の情報源がいることは常に確認してください。 これらの情報源は背景を説明できる専門家として機能するため、連絡先の詳細をアドレス帳に必ず追加してください。

情報源には、一次的な情報源と二次的な情報源の2つのカテゴリがあります。

一次的な情報源:これは、内部告発者です。直接的な証拠や経験をもたらしてくれます。 例えば、病院の裏口から不正に看護師から薬を購入した患者は、製薬業界の闇市場を証明することができます。看護師が舞台裏で何をしているのかについては詳しい情報をもたらしてくれそうもありませんが。
水質検査を毎週ではなく毎月行うように指示された上水道会社の工場の現場監督も、一次的な情報源です。 国際的な武器会社からの支払いを明確に示している閣僚の銀行取引明細書もそうです。
一次的な情報源というものは、それらを検証し、それらが本物であることを確認できる限り、直接的な証拠を提供するため、最も価値のある情報源です。 それは、たいてい見つけるのが最も難しいものです。
問題に直結する経験を持つ人々は、被害に遭うのを恐れて意見を公表することに消極的である可能性があり、銀行取引明細書や病院の記録などの文書は部外秘になっているか、プライバシー法によって機密文書になっている可能性があります。

二次的な情報源:二次的な情報源には、法人の報告書やまた聞きの話(「私には友達がいまして…」)を含む、あらゆる種類の公開資料が含まれます。
二次的な情報源は、特に前後関係や背景を明らかにします。 ただし、あなたが彼らから得た証拠や証言、およびそこから浮かび上がった人物は、確認し検証する必要があります。

情報源は、素材別に次の4種類に分けることができます。人、紙媒体、デジタル媒体、クラウドソーシングです。

(a) 人的情報源: 多くの情報源はこのカテゴリに分類されます。熱心に、あるいは不承不承協力してくれるかは別にして、直接の関係者、目撃者、専門家、および利害関係者です。情報源からあなたに接近してくる場合は、その人の社会的地位、適格性と動機を確認してください。
あなたが水道の民営化の記事に取り組んでいるなら、反対派の団体の代表は反対側からの情報をたくさん提供することができるでしょう。しかし、その情報は特定の立場の人からのものです。
団体の代表者はしばしば、団体の見解を要約するとき、意図的ではないのかもしれませんが、重要な側面を変更したり除外して、コミュニティの意見をまとめたり、編集することがあります。したがって、さまざまな視点を模索する必要があります。コミュニティの人々に取材する場合は、選択した対象が収入や性別、年齢など人口統計を反映していることを確認してください。あなたの記事に信憑性を与え、真に迫ったものにさせます。

(b) 紙媒体の情報源: これには、書籍、新聞、公式記録、便覧類、および契約書や銀行取引明細書などのビジネス文書が含まれます。
「灰色文献」と呼ばれる文書も含まれます。それは、広く流通はしているが公開の文書ではないもの(たとえば、民間組織から委託された研究、学術論文)、公式には機密となっている文書のことです。
行動記録文書(ペーパートレイル)にはいくつかの問題があります。真偽を明らかにできる証拠が存在するのかさえわからなかったり、公的な記録が混乱していたりしている場合があります。
さらに問題なのは、メディアが関連文書を引き出すことを許可する情報公開法がない場合です。そのような国の政府高官は、情報が公開される影響を恐れて、データを取得するプロセスに邪魔をいれる可能性があります。
そのため、記事に必要なドキュメントは何か、ドキュメントの保存場所と保存方法、およびドキュメントへのアクセス方法を早期に決めることが重要です。事前の許可が必要な場合は、公式の許可証が届くまでに数週間から数か月かかることがあるため、できる限り早くこれを行うようにしてください。

(c) デジタル媒体の情報源: これらには、ウェブサイトおよびデジタル媒体に保存された記録が含まれます。
オンラインの情報量は目を見張るものがありますが、他の情報源と同様に、情報の出所を確認する必要があります。 政府の当局者が自分たちについて書いている内容、および友人や家族が彼らをどのように説明しているのかを確認する必要があります。
しかし、ウェブは比較的野放しの状態になっていることを覚えておいてください。アクセス権を持つ人は、完全な捏造を含めて、何でも投稿できます。 さらに、ウェブ情報は、オンライン上に長期間放置されたままで 、情報が古くなっている場合があります。 常に初めに、最新の情報源を確認するようにしてください。 さらに詳しい情報が必要な場合は、欧州ジャーナリズムセンター(European Journalism Centre: EJC)が発行した『検証ハンドブック』(Verification Handbook)の無料コピーをダウンロードしてください。 デジタルコンテンツの処理方法に関するツールとテクニックを提供しています。

(d) クラウドソーシング: この新しいツールは、人的情報源とデジタル媒体情報源を組み合わせたものです。 読者の興味を探査報道に引きつけ、Twitter に体験談を投稿させたり、Facebookのライブビデオに意見を書かせたりして、自発的に貢献するように誘導するメディアの行為も含まれます。

情報源の種類有用性強み潜在的な問題点
人的記事に生命力と信頼性を与える対面での取材には通常、ハイテク・リソースは必要ない

直接体験することで、記事をより説得力のあるものにする
人は偏見や先入観をもっているし、嘘をつく可能性がある

裏付けに乏しい逸話のみが提供される場合がある—取材対象者が他の人たちの意見を代表するものであることを確認する必要がある

取材対象者は報道関係者に取材されることで被害を受ける可能性がある。どのようにして保護するか?
紙媒体確固たる証拠を提供する

歴史と文脈・背景情報を提供する
二次的な情報源は、自身が取り組むことのできる範囲を超えて、背景研究を広げる

一次的なドキュメント情報源(銀行の記録など)は「記録が公表を前提としたもの」とされ、信頼できる
プライバシー法、検閲精度などにより保護されている場合がある

アクセスが難しいまたは遅い

理解するには専門知識が必要な場合がある。 財務書類など

役に立たない空文書、または生の声のない超学術的な文書になる可能性がある
デジタル媒体何を検索できたかによるが、上記のすべてが可能音声やビデオへのアクセスを含め、コンピュータから実行できる

国内外のさまざまな情報源から情報は迅速に投稿される
結果として、正気のない記事となるかもしれない

インターネットのセキュリティの脅威をうけるかもしれない

インターネット上の「事実」を確認することは困難な場合がある

データへのアクセスを支援する法律が適切に制定されている場合があります。 国内法令は、タイトルだけでなくその範囲も異なるため、それ一つでどんな場合にも通用するような万能のアドバイスを行うことは困難です。 探査を始める前に、自国の法律を研究する必要があります。