情報公開を武器に

記者クラブに提供される情報が「行政が出したい情報」なら、情報公開により得られる情報は「行政が出さなければならない情報」です。情報公開法に基づいた公開義務が、当局には課されるからです。当局が隠したい情報が、情報公開により明らかになってスクープとなることはしばしばです。

しかし日本のマスメディアの記者で情報公開を使いこなせるのは、ごくわずかです。記者クラブにいれば次々に当局から情報を与えられるので、その情報が単に行政からのサービスの範疇でしかなくても、満足してしまっているのではないでしょうか。

これは本当にもったいないです。探査報道をするには、情報開示請求は基本中の基本としてできるようになる必要があります。

「強制不妊」から「警察によるDNA採取」まで

ワセダクロニクルはこの情報公開を駆使し、探査報道を行ってきました。2017年2月の創刊以来、13の探査報道シリーズを発信してきましたが、7シリーズで情報公開を活用しました。

例えば、旧優生保護法の狂気とも言える人権侵害を暴いた「強制不妊」では、厚労省と47都道府県に情報公開請求を実施。当時の厚生省が、強制不妊手術の件数で都道府県を競わせていたことや、実施件数が最も多かった北海道が「千人突破記念誌」を発行していたことを明らかにしました。

また「狙われるDNA」では、警察庁に対して情報公開請求をしました。その結果、警察が捜査の過程で集めデータベース化した「被疑者DNA」が、国民の100人に1人に上ることがわかりました。そのうち「殺人」や「強制わいせつ」「強盗」などの重要犯罪は5%に過ぎず、他の95%は軽犯罪であることも情報公開から明らかになりました。

これだけは覚えてほしい三つのポイント

ただし、法律で定められた手順に従って手続きを進めれば、誰もが同じように「特ダネ」を得られるわけではありません。そこには、当局との交渉におけるノウハウがあります。本欄では、「これだけはしっかり覚えておいてほしい」というノウハウを3つお伝えします。

①何を請求するか

情報公開で何を請求するか。これは単純です。自分が書こうとしているストーリーに沿って「こんな情報があるのではないか」という想像力を働かせることです。例えば先に挙げた警察によるDNA採取では、「国民の100人に1人も重要犯罪の被疑者がいるわけがない。きっと軽犯罪で件数を稼いでいるはずだ」と想像し、犯罪種別ごとの被疑者DNAの件数も請求しました。

また、取材先から「当局がこんな情報を持っている」と聞いて、その内容を請求するのも有力な方法です。

②「一切」で網掛け

請求したい内容が決まったら、その文言の最後に「一切」をつけます。なぜなら、「一切」がなければ開示請求を受けた当局は、請求者が欲しい文書の中から一部しか公開しなくても法律違反には問われないからです。例えば「強制不妊」で考えてみましょう。請求文言が「強制不妊に関し、厚生省と都道府県がやり取りした文書」だけで「一切」がなければ、厚生省が都道府県に出した多くの通達のうち、政府にとって都合が悪い文書は公開しなくてもよくなります。

③情報公開法第四条の2

「自分が欲しい情報に関する文書一切」で開示請求すると、当局の担当者から「この請求文言では対象が広過ぎる。文書を具体的に特定してほしい」という連絡が来ます。ここからが勝負です。

しかし、役所の中にある膨大な文書から、具体的な文書名を特定することは私たちにはできません。文書探索をできるのは役所の担当者だけです。どうすればいいのでしょう?

ここで非常に重要なのが、情報公開法第四条の2です。

「行政機関の長は、開示請求者に対し、補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない」

ここで言う「補正」とは、文書名を特定する作業のことです。つまり、行政の側が開示請求者の要望に沿った文書を探さなければならないのです。

もし行政の担当者が、文書特定のための情報を提供しなければ、この条文を提示しましょう。情報公開は法律に定められた行為で、行政に課せられた義務です。

以上3点を抑えた上で、どんどん情報公開を実践してみてください。他の仕事で忙しく、自分のテーマをじっくり取材できる時間がない時も、情報公開で文書を収集しておくことはできます。